2018年5月11日金曜日

マンガでわかる家族療法

私の学会仲間で、日本の家族療法の一人者、東(ひがし)豊さんが書いた本(マンガ)をご紹介します。

マンガでわかる家族療法 親子のカウンセリング編

私のオフィスの待合室にも置いてありますので、お時間があったらお読みください。

マンガなので読みやすく、家族療法の実際の様子やそのやり方が、分かりやすく描かれています。その冒頭の章は「不登校」の家族で、子どもとその両親との面接が描かれています。私の臨床体験とすごく共通しているので、私なりの目線で解説を加えたいと思います。

家族療法はマジックの治療法、とよく言われます。
今まで長い間学校に行かず、ひきこもっていた人が、信じられないように再び学校に行き始めます。
その訳は、他の流派(〇〇療法)では考えられない、ユニークでダイナミックなやり方をするからです。その様子を本の事例をもとに紹介しましょう。
このご両親は、スクールカウンセラーとお医者さんから、
「無理強いしてはいけません。本人の自主性を大切にしてそっと見守りましょう」と言われたことを3年間守り続けました。
これはとても大切な原則です。
特にひきこもり始めた初期は、学校に行きなさいと無理強いは禁物です。
なぜなら、親がマイナスの影響を与えてしまうからです。
それが功を奏して、2-3週間で学校に復帰する場合もよく見られます。
普通の(家族療法以外の)カウンセラーができるのはここまでです。

家族療法では、さらにもう一歩深めます。
ひきこもっている期間が1-2ヶ月を過ぎたら、親が積極的にプラスの影響を与えます。しかし、それは結構難しいものです。このマンガでは、その様子が見事に描かれています。
「母親と父親が協力して下さい。」
これも、とても大切です。
しかし、一般のカウンセラーは、どのようにしたら協力できるかまでは、具体的に教えてくれません。ここが、夫婦関係を専門に扱う家族療法の得意分野です。

実は、相談に来られるほとんどのご両親は、すでに十分協力しています。
少なくとも子どものために協力しようと、一生懸命努力しています。
しかし、それがうまくいかず、母親と父親の力が相殺してしまい、結果的に、子どもには何も伝わっていません。
両親は協力して、熱心に相談にやってくるのですが、残念ながら、夫婦の間に見えないシコリがあり、夫婦の力を削いでしまいます。
家族療法では、隠れたシコリを見つけ出し、うまく解除します。
すると、父親も母親も、のびのび自分らしく家族に関わることができるようになり、結果的に、子どもは元気を回復します。
マンガに描かれた両親は、苦悩する子どもに大きなプラスの力を与えています。
専門用語でエンパワーメントと言います。
しかし、家族心理を十分理解していない通常のカウンセラーや、当事者たちにとって、それが「プラスの力」であるとは思いもよりません。むしろ、マイナスになるから、そんなことはしてはいけませんと言うでしょう。
ここがとてもダイナミックな視点です。
子どもに問題が起きると、家族は自信を失くし、持っているはずのパワーを隠してしまいます。
家族療法は、子どもの力を信じ、両親の力を信じて、家族の潜在的なパワーを復活させます。その結果、子どもの問題が見事に解決します。

これ以上本の内容を書くと、ネタバレになりますので、あとはどうぞ本を手に取ってお読みください。

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