2018年4月13日金曜日

不安を乗り越えるには、経験と安心が必要

私のニュージーランド旅行とスキーのお話しをします。

先日、休暇で初めてニュージーランドに行きました。
レンタカーを借りて、観光地を周りました。
海外でのドライブは何度か経験しているのですが、ニュージーランドは車のスピードが速く、怖かったです。

NZには「高速道路(ハイウエイ)」がありません。
というか、日本でいう一般道路が「高速道路」なのです。
人口密度が日本の20分の1のNZでは、小さな集落が点在し、集落と集落の間は何キロ、十キロも離れていて、原野のみ。何もありません。北海道のスケールをさらに大きくしたイメージです。
道路の標識は整備されています。
集落に近づくと、80キロ、50キロといった標識があり、制限速度が低くなります。
しかし、集落を抜けると、100キロの標識があります。

私は日本の高速道路を100キロで飛ばすのは慣れていて心配ありませんが、一般道路を100キロで飛ばしたことはありません。
ほかの車がみな100キロで走っているので、私もスピードを上げようとしますが、とても怖くなります。せいぜい80キロくらいにセーブして走っていると車が後ろから迫ってくるので、何度も徐行して先に行かせました。
私も100キロにスピードを上げようとすると、怖さから緊張して身体がこわばり、どうしてもできません。無理にアクセルを踏むと、辛くなります。

なぜこんなに怖いのでしょう?
自分自身でもよくわかりません。
日本の高速道路では平気で出しているはずの100キロが、NZの道路ではどうしても出せません。
日本の一般道路で100キロなんて、とても危なくて出せません。その体験が身体に染みついて抜けないからでしょうか。

NZの道路はよく整備されています。100キロで走行できるように設計されているし、見通しも良く、原野を貫く道路には人も障害物も何もありません。理屈では日本とは違って安全なのだとは理解しても、身体のこわばりはどうしようもありません。

しかし、経験を積むうちに、だいぶ慣れました。
NZには1週間滞在したのですが、後半になると不安が和らぎ、自然に100キロを出せるようになりました。

〜〜〜
私の趣味はスキーです。
冬になると、顔が黒くなるので、お気づきの方も多いと思います。
子どもの頃からずっと続けており、ゲレンデでは面白くなくなり、
3年ほど前からバックカントリー・スキーを始めました。

バックカントリー・スキーとは、リフトがかかり、コースが整備されたゲレンデを抜け出し、自然に満ちた山の中を滑ります。
よくクロスカントリー・スキーと混同されるのですが、
クロスカントリー・スキーは平らな土地を細いスキーで走る北欧起源(ノルディック)のスポーツです。冬季オリンピックでお馴染みです。
バックカントリー・スキーはアルプス地方(アルペン)が起源で、急斜面を滑ります。新雪(パウダー)も滑るので、浮力を持たせるために幅の太いスキーで走ります。オリンピック競技にはありません。時々、遭難のニュースでメディアに出ます。

誰もいない山に分け入っていくのでとても危険です。雪崩に遭ったり、滑落したり、道に迷って遭難します。整備されていない急斜面を滑るには高度の技術が必要です。ひとりでは行かず、プロのガイドさんと一緒に行きます。遭難する人は山の怖さを知らず、ガイドを付けずに行ってます。
リフトもゴンドラもないので、スキー板の裏にシールという登攀具をつけて山を2-3時間かけて登り、10分で滑り降りるといったことを繰り返します。登るときは辛いのですが、誰もいない大斜面を自由に滑る解放感はゲレンデでは得られません。

時間をかけてドロップ・ポイントまで登りきり、シールを外して、さあ滑ろうという瞬間はとても怖いです。斜面は急でちゃんと滑れるのか不安になります。バンジージャンプの経験はありませんが、プールに飛び込む時の心境に似て、とてもドキドキします。
さあ、滑ろう! 左から2番目が私です。

しかし、いつまでも躊躇しているわけにもいかず、ガイドさんに促され、思い切って飛び込みます。滑り出したら怖いなんて言ってられません。必死に滑ります。うまく滑れる時もあるし、スピードが出過ぎて転ぶこともあります。
不思議なもので、「スピードが出過ぎてコントロールできなくなる。怖い!」と心の中で思った瞬間に転びます。その時は、雪まみれになりますが、怪我はしません。心が未然に危機を回避しているのでしょう。
上手く滑れず転べば落胆し、自己嫌悪に陥り、
転ばずなんとか滑り切れば、達成した爽快気分になります。

そんなことを3年ほど経験し、先日、以前に登った同じドロップ・ポイントに行きました。
あれ、ここは前に来た同じ場所だっけ?
前回は急斜面だったのですが、今回はそれほど急ではありません。
急斜面か否かという判断は、私自身の主観です。経験値によって、感じ方がかなり違います。
ここなら難なく滑れるだろうと予測するとドキドキすることも緊張することもなく、身体の力を抜き、楽に滑り降りました。

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私にとって、NZの運転も、バックカントリー・スキーも不安を伴うチャレンジです。
若者が自立し、大人になることは、さまざまな不安を伴うチャレンジです。いままで周りの人がやってくれていたことを、自分の力でやらなくてはなりません。
怖くて当然でしょう。

1)経験と失敗が必要です。
怖いのに無理に滑り降りようとすると、緊張して、こけます。でも、致命傷は負いません。何度かこけて失敗を繰り返すと、こけずに成功することもあります。経験を増やしていけば、当初怖かったことが、それほど怖くなくなります。

2)安心が必要です。
ガイドさんなしのバックカントリー・スキーは不安過ぎて行けません。
ドロップ・ポイントで躊躇している時、もう行っても良いよ!とゴーサインを出してくれる人、
もしも自分では回復できなくなった時には助けてくれる人
がそばに居てくれたら、安心して、不安を乗り越えることが出来ます。

安心がなく、不安のままで滑り出すと、傷つきます。
傷つきを回避するために、ひきこもります。

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