2017年6月22日木曜日

男性のメンタルヘルス

父親の力でひきこもりを解決する

父親力が子どもの自立のカギを握る。
母親中心の子育てからの脱却。
父親を家族に呼び戻し、父親役割をフルに発揮する。

家族にどう関わってよいのかわからない
という男性が増えています。
子どもにどう言えばよいのかわからない。
妻とどう向き合えばよいのかわからない。

男性は家族の中に入れない
家族に男性の居場所がなくなった。家族という親密な関係性から疎外されている。
従来の性役割分業(女性=ウチ、男性­=ソト)の遺産

子どもに向き合えない
男性は家族と関わる自信がない。
子どもから拒否される(万能的自我に留まる子どもの特徴)
妻からダメ出しを食らう。(そのやり方は違う)
家族からの抵抗を乗り越えて前に進む勇気がない。どうしてよいかわからない。
自分の父親も不在だった。子ども時代、父親の背中を見て育ってきた。子どもに関わる父親のモデルがない。自分の父親は子ども(自分)に関わらなかった。自分が父親になり、どう子どもに関わって良いのかわからない。
親としての自信喪失→父親・夫役割からの撤退

夫婦が向き合えない
夫婦のコミュニケーション不足
l  夫婦が心から向き合い、お互いの気持ちを伝え合う
l  考えが違っていても、相手を否定せずに話を聞く。
l  相手の立場を尊重しつつ自分の立場を主張し、お互いが折り合えるポイントを見出す。
このようなコミュニケーションに慣れていない。

男性の失感情症 (アレキシサイミア; alexithymia)
感情を扱えない。
自分の感情がわからない(感じることができない)。表現できない。
相手の感情がわからない(受け取ることができない)。共感できない。
感情の読み書き能力(感情リテラシー)
ふたつの異なる言語があります。

1)理性言語
状況を理性的に判断して、やるべきことの計画を立てて遂行する。
気持ちに左右されてはいけない。公正に判断して、自分の感情は押し込めて遂行する。
目的を達成する。
社会の公的な関係性(会社など)で用いられる。

2)感性言語
相手の気持ちに共感し、自分の気持ちを相手に伝える。
相手を感じる、受け止める、支える、見守る。
人をケアする・養育する。弱者を助ける。他者に愛情を注ぎ、優しさで包み込む。
理性よりも感性(自分と相手の気持ち)を優先する。理屈が通らない。進歩のない繰り返し。
家族関係で用いられる。

失感情症の症状

l  うつ病
気持ちに鎧を着せる。マイナスの気持ちを麻痺させる。
すべての気持ちを麻痺させる→「うつ病」

l  怒りの爆発
マイナスの気持ち(不安、恐怖、悲しみ)→攻撃性に変換される。
攻撃性の向かう先
腕力の攻撃性→親しい人への暴力(妻へのDV、子どもへの虐待)
性的な攻撃性→性的逸脱(ポルノ、買春、セクハラ、風俗通い、浮気)
自分自身に向かう攻撃性→自傷行為、自殺、依存症

l  ソトとウチの顔の分裂
社会人として立派に役割を果たし、家族を養い、経済を支え、家族に対する役割も果たしてきました。まわりから尊敬される社会人。しかし、いざ家族の問題に直面すると、どう関わって良いのかわらない。家ではだらしない姿;わがままに振る舞う、怒りをぶつける、暴力をふるう。家族から見放される。

女性恐怖症
妻が怖い。妻の言葉に傷つく。
男性からの腕力の暴力 vs. 女性からの言葉の暴力
母親が怖い。
母親からの精神的な自立が果たせていない
恐怖→コミュニケーションの断絶(会話をしない、家族から撤退する)。暴力(相手からの攻撃におびえ、自分から攻撃する)

男性の感性を磨く
感情の読み書き能力(感情的リテラシー)を学ぶ
(外国語やITリテラシーを学ぶように)
感情の学び始めは怖い。
男性は女性の怒りや拒否に耐えられない。
e.g.英語恐怖症、ITへの抵抗感)
→練習と経験あるのみ。(感情のコミュニケーション練習)

1)自分の感情を学ぶ。
自分の気持ちの動きに敏感になる。
肯定的な気持ち:喜び
否定的な気持ち:悲しみ、恐れ、不安、怒り
自分の感情を言葉に表す。
心の鎧を開き、弱さをさらけ出す
男性の怒りの表出、男性の涙を見せる。

2)相手の感情を学ぶ。
相手と向き合う。
Ø  自分の子ども
Ø  妻(パートナー)
Ø  母親・父親、きょうだい(原家族)
家族に対する気持ち(悲しみ、怖れ、怒り、喜び)=それは自分自身の気持ち。自分の気持ちに向き合うことになる。

夫婦関係の改善

夫婦間のシコリを解きほぐす

家族メンバーの間には、未だに解決されていない過去のシコリが残っているものです。お互いに距離を開けて関わらないようにしていれば、シコリを残しておいても仕方がないでしょう。しかし、家族の力をフルに発揮するには、お互いの距離を近づけます。その時は、過去のシコリを棚卸しして整理します。たとえば、次のようなシコリです。

夫婦間の暴力

夫婦間の暴力には、「手を挙げる」、殴る蹴るといった身体的な暴力が思いつきますが、それ以外にも様々な種類があります。

l  身体的暴力
一番代表的な暴力です。普段は仲が良くてもアルコールが入ったり、喧嘩になった時などに暴力が出現します。たとえその頻度(年に1回とか)や程度(骨折や外傷といった大きなレベルから、傷はつかない小さなレベルまで)に関わらず、暴力の存在は夫婦間に大きな溝を与え、被害者に大きな傷を与えます。

l  性的暴力
性的な関係が許される夫婦であっても、双方の同意のない無理なセックスは暴力となります。避妊が必要なのに、それを怠る場合も該当します。

l  言葉の暴力
相手が傷つく言葉を一方的に投げかけます。たとえ本人が意図せず何気なく発した一言であっても、それを受け取る側にはシコリとして長く残ることもあります。

l  経済的な暴力
生活に必要なお金を渡さないなど。

l  行動を束縛する暴力
普段の監視したり、行動を制限することにより、相手を束縛します。

足を踏んだ方は忘れても、踏まれた痛みは記憶に長く残ります。
浮気、暴力(DV)、アルコール、ギャンブルなどは男性が加害者で女性が被害者というパターンが今までは一般的でしたが、最近では逆のパターン、つまり女性が加害者で男性が被害者になるケースも少ないながらあります。
これらは身体の傷や生活上の不便以外に、心に大きな傷を残します。
特に深刻なのが自尊心の低下です。自分がやっていること、たとえば子育て、子どもへの関わり方、人との関わり方などについて、これでいいのだろうかと自信を持てず、自分はダメな人間だと悲観的になり、自分を責めるようになります。

これ以外にも、夫婦間には長い間に気づかないうちに傷ついて、それがトラウマとして後までのこることがあります。

子育てに関わってこなかったというトラウマ
母親が家事育児を担当して、父親が外で稼ぐという役割分担が人々の意識の中に根強く残っているために、父親が子育てに関わらないことがそれほど問題だとは意識されにくいものです。しかし、子育てに苦労している時に、一緒に関わってくれなかったというトラウマ(心の傷)は深く心に残ります。子どもが大きくなり思春期に達して父親の関わりが大切と言われても、今まで関わってこなかった人がうまく関われるわけがないと、夫のことを信用できません。

言葉を交わさないトラウマ
必要最小限の用事や、社会の出来事など理屈(理性)は話せても、お互いの気持ち(感性)を語り合えない夫婦がいます。気持ちが通じ合わないと、夫婦としての実感と安心感を持つことが出来ません。

セックスレスというトラウマ
人々は二つのコミュニケーション様式を用いて、親密さを成就します。ひとつが気持ちの触れ合い(言葉によるコミュニケーション)であり、もうひとつが身体の触れ合い(スキンシップ、そして夫婦間のセックス)です。言葉は理性を持った人間だけの特技ですが、スキンシップはまだ言葉を持たない赤ちゃんや、哺乳類動物でさえとても大切なコミュニケーションです。若い頃の生殖のためのセックスを終えた後、コミュニケーションのためのセックスを夫婦が行えないと、身体を通した安心を得ることができません。

親族から守ってくれなかった痛み
「嫁と姑」に代表される実家とのいざこざはどの家族にもあるものです。夫がしっかり仲介して、妻を守ってくれれば良いのですが、そのことから逃げていたり、実家側に付いたりすると、妻の痛みは大きなものです。妻がどれほど辛かったか、夫は未だに理解していません。

過去に起きた出来事は、たとえ現在は収まっていても傷の痛みは消えません。夫婦が深く気持ちを通じ合わせることが出来ません。
シコリを整理するためには、まず言葉に出してみることです。直接相手に伝えることが難しかったら、まず信頼できる人に打ち明けてみましょう。友だちや専門家など、家族ではない第三者が良いです。

家族の力で問題解決

強い心と弱い心

人は強い心と弱い心の両方を持っています。

弱い心
強い心
傷つきやすさvulnerability
回復力resilience
自己否定(自分で身を守れない)
自己肯定(自分で身を守る)・自信
外発的動機づけ
(まわりの力で動く:親のエンジン)
内発的動機づけ
(自らの力で動く:自分のエンジン)
困難さからの撤退
困難への挑戦

弱い心とは、傷つきやすさvulnerabilityのことです。自分はダメな人間と思い込み、周りの人が自分のことをどう見ているかとても気になり、人の視線を気にします。人の言葉や些細な行動を否定的にとらえ、人と関わることに自信を失います。傷かないように、ひきこもります。

強い心とは回復力resilience、言い換えれば心の元気さのことです。逆境に遭遇しても自信を失わず、困難に挑戦し、なんとか乗り越えようと前に進みます。相手から傷つけられても撤退せず、人と関わり続けます。
もともと「弱い人」「強い人」というのはありません。だれでも弱い心と強い心の両方を持っていて、その割合が変化しているだけです。
弱い心が増える状況とは、逆境や失敗体験が重なる時、喪失体験の悲しみが強い時、ストレスが加わり疲れがたまる時、孤立して理解してくれる人がいない時などです。
強い心が増える状況とは、物事がうまくいっている時、良き理解者が近くにいる時などです。

弱い心の割合が高くなると、自分は弱い人間だと思い込みます。しかし実際には、弱い心が前面に出て、強い心が陰に隠れ見えなくなっているだけです。
強い心の割合が高くなると、自分には乗り越える力があると自信を回復します。
状況によって、人はいくらでも弱くなります。
状況によって、人はいくらでも強くなれます。
ですから、諦める必要はまったくありません。
諦めてはいけません。

どうしたら、ひきこもりから抜け出すことができるのでしょうか?
強い心が十分に機能するようになれば、自然にひきこもりから脱します。

すべての人は自立する力を持っています
身体の栄養さえ足りていれば、子どもは自然に背が伸びます。その栄養素はたんぱく質、炭水化物、ミネラルなど食事に含まれています。
自律する力も同じ考え方です。心の栄養さえ足りていれば、子どもは自然とウチの世界から巣立ちソトの世界に飛び立ちます。
その栄養素は、守る愛放す愛という対人関係の中に含まれているふたつの栄養素です。

子どもの自立をうながす二種類の愛情
守る愛
放す愛
危機の回避・保護
傷つきへの挑戦
問題の早く見つけ保護する
本人を信頼して問題解決を任せる
傷つきやすさをカバーする
回復力を信じる
ウチの世界の万能的自我を承認する
ソトの世界の傷ついた自我を承認する
安定性を保つ
変化と成長を促す

守る愛は、子どもを無条件に愛し、そのままの姿を肯定します。思春期前の幼い子どもにとって重要です。
放す愛は、子どもの回復力を信じて、困難に挑戦する勇気を与えます。自立して、ソトの関係性に導きます。思春期には放す愛が重要になります。

自立する栄養素は、人との関わりの中にあります。
ソトの世界との接点が維持されていれば、人々との関わりから栄養を吸収できます。種々雑多な人々と試行錯誤を繰り返しながら、大人の関係性を少しずつ身につけていきます。家族はそれほど活躍する必要はありません。

家族が子どもに自信を与え、ひきこもりを回復する

しかし、ひきこもると、ソトの人たちとの交流が途絶えます。唯一、関わることができるのは、家族の人たちです。家族が良質なふたつの栄養素(守る愛と放す愛)をたっぷり与えます。
ひきこもりの脱出には、家族の力がとても大切になります。

ひきこもりの葛藤期には、ストレスから身を守ろうとする子どもを信じて、守る愛を与えます。親は口出しをせず、子どもに任せて、安心してひきこもれる環境を提供します。
ひきこもりの自閉期と試行期には、子どもの潜在力を信じて、放す愛をたくさん与えます。安心してひきこもりから脱する環境と、社会に戻る勇気を与えます。
 よくカウンセラー(心の専門家)は「ひきこもっている子に対して親や周りの人は、何も口出しせず、子どもが自らの力で回復するのを待ちましょう。」と言います。これは葛藤期に大切です。親の過剰な言動は、子どもにとってストレスとなります。
 しかし、自閉期と試行期には逆効果です。子どもの関係性から大人の関係性に切り替えることができず、ひきこもりが長期化します。この時期に家族は放す愛をたっぷり与え、安心して社会に飛び出す環境を与えます。

親の強い心弱い心
親の心にも強い心と弱い心があります。
親の強い心は子どもを信頼して、子どもの状況をよく見極め、守る愛と放す愛を上手に使い分けます。子どもに安心感を与えます。
親の弱い心は、子どもが傷つくことをとても心配します。子どもに不安感を与えます。そして、守る愛と放す愛のバランスを失います。放す愛が必要な時にも、守る愛を与えすぎてしまいます。子どものことを先回りして心配して、子どもにたくさん口を出したり、守りすぎてしまいます。自立したい思春期の子どもは、そのような関わりをとても嫌がります。
あるいは、不適切な放す愛を与えてしまいます。子どもは、親との良い関わりを求めています。しかし、子どもが親から何かを言われるのを嫌がるだろう、親からの影響を嫌がるだろうと過剰に心配して、親は何もしない方が良いと思い込んでしまいます。結果的に、腫れ物に触るように子どもに接し、親の愛を何も与えられなくなります。
子どもがひきこもると、親は自分の失敗と受け止めて、子どもに関わる自信を失い、弱い心が増殖していきます。

家族力を発揮するために

ひきこもりに限らず、家族の力は、子どもや家族の問題を回復へ導きます。家族の力とは、家族みんなが強い心をしっかり保持して、ちゃんと繋がっている状態です。そのためにできることを具体的に説明します。

孤立した子育てからの解放
子育ては難しいものです。一人だけではうまくいきません。
子どもが学校に上がるまでは保育園や地域の子育てサポートもあり、若い父親も積極的に子育てに参加します。しかし、小学校に上がると、一見手がかからなくなるので、母親一人で育てられると思いがちです。
思春期の子育ては難しいものです。思春期こそ多くの子育てサポートが必要です。

母親中心の子育てからの脱却
児童期から思春期に入ると、子どもへの関わりが格段に難しくなります。手はかかりませんが、高度な判断が求められます。子どもは自立しようとして親に反抗します。親も子どもも傷つきます。親は守るべきか、放すべきか迷います。誰にも相談できず、ひとりで子どもに関わっていると、どうしても保守的になり、のびのびとした元気な子育てが出来ません。どうしても安全な方向、つまり守る愛に傾きがちになります。
母親ひとりだけではなく、子育て体験を同じ目線で関わる人が必要です。

父親と母親が協力する
思春期の親は働き盛りの世代で、仕事のストレスも大きく、子どもや家庭のことを考える余裕がありません。夫婦で子どものことを話し合う時間も十分ではありません。子どもが順調に成長している時は、それでも構いません。
しかし、子どもに問題の兆しが見えた時、父親は仕事の忙しさを乗り越えて、家族の時間を意図的に作り出します。たくさんの時間は必要としません。短時間でも良いから、毎日子どもの様子を情報交換して、どう関わったら良いのか、両親でよく話し合います。それが家族の力です。

母親と父親が折り合う
男親と女親は考え方が違うものです。
伝統的に、母親は守る愛を、父親は放す愛を発揮します。
困難な状況に遭遇した時、母親は「無理しない方が良い」と伝え、父親は「困難に立ち向かえ」と伝えたります。
言っていることは反対なのですが、どちらが正しくてどちらが間違っているということではありません。両方の要素が必要です。両方のやり方を折り合わせて、子どもに関わってあげてください。

家族の負の遺産を整理する
家族はプラスとマイナスの体験を前の世代から引き継いでいます。負の遺産を多く抱えていると、プラスの家族の力を発揮できません。家族の力を発揮するために、棚上げしていた遺産を整理します。具体的には次のような体験です。

1)喪失の悲しみ
死別や離別によってパートナーを失った時、あるいは子どもを突然失った時、親は守る愛に傾きがちになります。特に、家族を自死により失う痛手はとても大きいものです。はとても辛いので、記憶を心の冷凍庫に凍らせています。しかし、心に秘めた悲しみいつまでも消化できません。
悲しみを整理するためには、それを安全に語り、触れてはいけない思い出から、想起しても大丈夫な思い出に変換します。

2)失敗体験
過去の失敗から回復できていないと、また失敗を繰り返すのではと心配します。
例えば、子どもの頃、ひきこもっている人が家族にいると、親になっても自分の子どもがひきこもるのではと心配します。きょうだいが親と葛藤している姿に傷つくと、親との葛藤を避け「いい子」を演じようとします。

3)心配性の世代間伝達
自分の親からたくさんの心配を受けると、過剰に心配すること(弱い心)が家族の伝統となり、自分の子どもにも必要以上にたくさん心配します。

タイムマシンで過去に戻り、これらの遺産(喪失・失敗・心配性)を取り消すことはできません。負の遺産を思い出すのはとても辛いのですが、その体験を言葉で語り、信頼できる人に受け止め、理解してもらいます。すると、今までは「語ることができない、恥ずかしい、自尊心を下げる体験」が、「辛いけれど話すことが出来て、人が理解してくれて、同じような境遇に遭遇すれば誰にでも起こりうる体験」に変換されます。そうすれば、自分を責める必要がなくなり、過去の遺産を清算できます。
家族を縛っていた負の力から解放されると、新たな家族の力を呼び戻すことができます。

安心できるガイドラインを与える
思春期は学校、進路、就職、結婚と、さまざまな選択肢が待ち受けています。道に迷った時、どの方向に進んだらよいのか明確なガイドラインが必要です。決めるのは本人です。しかし、どの道が安全で選んでも良い道なのかを示すのは親の役目です。
 子どもに問題が生じると、親はどう子どもに関わったらよいのか迷います。
l  今、子どもに何が起きているのか?
l  なぜ、そうなるの?
l  どうすれば解決できるのか?
l  子どもにどう接したら良いのか?
これらの疑問に答えてくれる明確なガイドラインが必要です。
今まで行ってきたやり方でうまくいかなければ、違った新しい視点が必要です。
そのために、子どもと家族を支援してくれる第三者につながります。田村研究室では、子どもと家族の正確なアセスメントを行い、的確なアドバイスを差し上げます。

2017年6月21日水曜日

不登校・ひきこもり

不登校・ひきこもりとは?
人との関わりに自信を失い、家族以外の人と関わることを避けるために学校や会社などの社会生活から撤退することです。
l  不登校は、学校に行かないこと。
l  ひきこもりは、外部の人との接触を断つこと。
言葉は異なりますが、その心理的メカニズムは類似しています。

ひきこもりのメカニズム
ひきこもりは子どもの関係性から大人の関係性へスムーズに切り替われない状態です。
自立する準備ができていないうちにソトの世界に飛び出すと、傷つきを繰り返し、自信を失い、人との関わりから全面撤退し、傷つきを避けるためにひきこもります。

短期間ひきこもることは心の成長に必要です
傷ついたら休むことが大切です。1−2週間程度ひきこもり、元気を回復して再び飛び出します。

ひきこもりが長期化すると、大きなストレスになります。
ひきこもる期間が長引いても、回復するチャンスはたくさんあります。
しかし、ひきこもる期間が2週間以上続くと、戻りにくくなるのではないか、このまま長い間引きこもってしまうのではないかという不安を本人も家族も抱きます。そのことが自信をますます失わせて、前に向かうことを諦めてしまいます。
こうなると、いくら時間を経てもひきこもりは解決しません。本人と家族が孤立してしまいます。まわりからの支援が必要になります。

対人関係の発達とひきこもり
思春期は大切な人との関係性が大きく切り替わる時期です。10〜12歳くらいから思春期が始まり、10年ほどかけて大人の関係性に変化していきます。

子どもの関係性
大人の関係性
近しい関係(家族)
遠い関係(学校・職場・世間)
守られたウチの世界(同質性、閉鎖系)
傷つくソトの世界(異質性、開放系)
自分中心の世界(万能的自我)
他者と折合う世界(社会的自我)
依存(対象との一体感)
自立(対象からの分離)
他者(保護者)の責任
自己責任

子どもの関係性
子どもは自分の身を守る力を持っていません。親など近くにいて保護してくれる人との依存関係の中に生きています。保護者から無条件の愛情を受け、安全なウチの世界で安心して成長します。自分は愛される存在であり、この世に生きていて良いのだという基本的な自信を獲得します。自分のことをすべて理解してくれる人が何をすれば良いのかを教えてくれます。自らの力ではなく、保護者のエンジンで動きます。したがって物事がうまくいくのも失敗するのも、保護してくれる人の責任であり、自分自身で責任を取ることはできません。傷つきを自分自身で修復する力を持っていません。自分の思い通りになる100%を求め、それが叶わずプライドを保てない時は、傷つきを回避しウチの世界に全面撤退します(0%)。物事が思い通りに動いているうちは問題ないのですが、自分の思い通りにいかないと、すべて諦めてしまいます。

大人の関係性
大人は自分の力で身を守ります。どの方向に飛んで行くか自分で決めて、自分自身のエンジンで飛びます。ソトの世界は学校・職場など自分のことを十分に理解してくれない遠い人たちです。自分を全面的に受け入れてくれず、少なからず傷つきます。こうありたいという自分の思いは全部は果たせず60-70%に目減りしますが、それを受け入れ他者と折り合います。失敗しても全面的に撤退することなく、前に進み続けるうちに少しの成功体験を得て、徐々に自信を獲得してゆきます。そのようにして、外の世界に自分の居場所を見出します。


ひきこもりの回復段階と家族の支援策

状況
家族の支援策
葛藤期
イライラ、焦り。身体の不調。攻撃性。
安心してひきこもる環境。守る愛が中心。ストレスを解放する。
自閉期
人の交流を絶つ。昼夜逆転。
安心してひきこもりから脱出できる環境を与える。
試行期
少しずつ社会との接点を回復する。成功と失敗を繰り返す。
変化への希望、放す愛が中心
回復期
自分の居場所を見出し、自信を回復する。
家族の自信の回復

葛藤期
他者との関わりに傷つき撤退します。ひきこもっていることに焦りを感じると、イライラして暴力を振るうこともあります。
まわりの人は、ゆっくり自信を回復するために、焦らず安心してひきこもれる環境を整えます。本人が立ち直る力を信じて、まわりの人は口を出さず暖かく見守ります。
1-2週間でストレスが癒され、社会に復帰します。

自閉期
2週間以上ひきこもっていると、ひきこもっていること自体がストレスとなります。復帰するきっかけを失うと長期化します。まわりの人は積極的に働きかけ、安心してひきこもりから脱出できる環境を与えます。

試行期
学校や社会に少しずつ復帰します。失敗と成功を繰り返しながら、少しずつ他者と関わる自信を回復します。家族は放す愛を与えます。

回復期

学校や社会に自分が安心できる居場所を見出します。家族は自信を回復し、成長した子どもを信頼できるようになります。