2015年11月13日金曜日

二種類の家族モデル

佐藤 花子さん(妻:仮名)
私はどんなに夫の家族から否定されていたことか。
私がまるで部外者のように扱います。私の存在が否定されました。

夫は、そんな時でも私を助けてくれませんでした。
いくらお義母さん・お義父さんにあなたから言ってほしいと頼んでも、「仕方がないんだ」と一言で片づけ、取り合ってくれません。逆に、「もうそのことは言うな!」と逆切れされます。
私は夫から守られているという感覚が全くありません。
子どものこと両親が協力するべき、、、とよく言われますけど、そんな夫に心を開くことは正直に言えば無理です。

佐藤 太郎さん(夫:仮名)
妻と私は、生まれ育った環境があまりにも違うんですよ。
私の実家は地方の、とてものんびりした田舎です。
代々農業を営んでいたけど、戦後、農地を売って商売を始めました。素朴で、ざっくばらんな、何でも言い合える大家族です。

妻は都会のサラリーマン家族に育ちました。教育ママと多忙なサラリーマンから、かなり厳しく勉強させられたようです。妻の兄は親の期待どおりの大学に進み、立派な会社に就職しました。しかし、妻の弟の方は残念ながら、、、、。あっ、このことは妻には内緒にしていて下さい。この話になると、妻の機嫌が悪くなります。

うちに嫁いだ後も不満が多くて、、、
ウチの実家のことを、内心馬鹿にしているんです。妻はわがままなんですね、基本的に。
うちは、小さい時から大きな家族で育ち、もまれてきました。
妻の家族は都会育ちで祖父母も同居していなかったから、うちの家族の習慣を理解できないんです。
自分勝手で、ほとほと手を焼いています。あっ、このことも妻には言わないでください。

ご夫婦で深く話し合うと、どうしても口論になってしまうのですね。

どの夫婦でも育った環境が違いますから、価値観をすり合わせが難しいのは当然です。
おふたりは何年間結婚されていますか?

いまからでも遅くはありません。よく話し合い、たくさん口論をして、価値観をすり合わせてください。
「良い意味での口論」が大切です。多少は傷つけあっても構いませんから(ただし、大きくは傷つけないでください)、お互いの価値観をよく話し合いましょう。

その際に、ひとつ大切なことを説明します。
「家族」の捉え方には二種類あります。

ひとつは、伝統的な拡大家族観です。
家族の枠組みは祖先から子孫まで綿々と続くという考え方で、自分の親も子も同等に尊重します。

ふたつめは、近代的な核家族観です。
結婚したら実家から離れて、親としての自分たちと子どもたちで新しい核家族を作るという考え方です。この場合、自分の老親とは距離を置き、核家族を一番大切にします。老親との絆を保とうとするのは「親離れできていない人」と否定的に見なされます。

戦後、欧米からの入ってきたこの考え方が、今では主流になりつつありますが、依然として伝統的な拡大家族観も生きています。

家族に正解はありません。
伝統的な拡大家族観と、近代的な核家族観の一方がダメで、もう一方が正しいというものではありません。

佐藤さんの場合は、ご主人が拡大家族観をお持ちで、奥さまが核家族観をお持ちです。
そのような家族が多いです。なぜかというと、昔は男性優位社会で女性のさまざまな犠牲の上に社会や家族成り立っていました。現代の男女平等の考え方は核家族観を支持します。
男性が拡大家族観を志向し、女性が核家族観をより志向するのももっともなことです。それを急に変える必要はないと思います。

ただし、重要なことは、相互の価値観と気持ちを尊重することです。
佐藤さんの場合は、奥さまがご主人の家族から痛つけられた苦しみを、ご主人が十分に理解し、奥さまのお気持ちをわかって、奥さまを支えてあげることが大切です。

それとともに、ご主人が親世代の価値観を尊重したいというお気持ちを、奥さまがよく理解し、わかってあげて下さい。

そうすれば、ご夫婦がよく理解し合い、核家族も、拡大家族も尊重することができます。
このように理屈で説明するのは簡単ですが、実際、おふたりですり合わせるのはかなり難しいと思います。
しかし、子どものことでご両親が本当に協力するためには避けて通れない道なので、よくよく「良い口論」をしてください。

2015年11月11日水曜日

「ひきこもり講演会」参加者からの感想を紹介します


先日の講演会に参加された方々からの感想が届きました。

  • わかりやすいお話で参考になりました。
  • 先生のメッセージがとてもシンプルでわかりやすく、具体的な話を聞けたことがよかったです。ひきこもりの高校生と母をサポートしています。とても難しく歯がゆく感じたりしますが、今日の話を受けて母にも話したいと思います
  • 親の気持ちの持ち方がわかりました。
  • 親しみやすい先生のわかりやすいお話でした。続編お願いします。
  • 時間をもう少し長く取って欲しかった。

  • ご参加ありがとうございます。
    今回はわりと小さなホールだったので、みなさんの表情から反応の様子もよくわかりました。私としても良い時間をみなさんと共有することができました。
  • 誰にも聞けないお話を分かりやすく説明されてありがとうございました。次回は大人になってしまった子どもで社会参加出来ない悩みについてお願いします。

  • そのようなニーズが最近とても高くなっています。子どもが20代の後半、あるいは30代・40代なのだが、、、というお話をよく伺います。また別の機会に詳しくお話ししたいと思います。
  • 用紙で質問させて頂けるのは大変有難く思いました。

  • はい、これが私のいつもの講演スタイルなんです。前半に私から「ひきこもり」についてのお話をして、休憩時間に無記名で質問を用紙に書いていただきます。後半の時間はそれを読み上げながら、具体的にお話を進めてゆきます。
    通常の講演会では、演者の話がほとんどで、参加者からの質問は最後の付け足しで短い時間しかありませんね。私はみなさんの具体的なニーズに合わせてお話をしたいので、いつもこのような形で進めています。
    手を上げて質問するまでの勇気は出ませんが、参加者の皆さんは多くのことを知りたがっています。用紙に記入していただくと、いつもたくさんの質問が出ます。今後この場でも、質問のいくつかを紹介したいと思います。
  • 大変為になるお話で希望が持てました。
  • 家族に出来る事があるという希望を頂けました。
  • 勉強会に出ても具体的に子どもに対する声掛け対応がわからず、意味のないものと考え始めていたのですが、今日はまさに今の私の脱出の手掛かりが見つかったような気がしました。

  • 家族が「希望を持つ」ということがとても重要です。
    ひきこもりが長引くと、家族も疲弊して「希望」を失ってしまいます。
    どうにか良くなるかもしれない、、、という「希望」がないと、快復しません。
    逆に言えば、家族が「希望」を持つことが出来ると、それが子どもにも伝わります。
    どうやったら家族が希望を持てるのだろうか、、、その話をさせていただきました。
  • 守る愛→放つ愛に転換することが必要と分かり、勉強になりました。安全に傷つけることがどうしたらいいか、まだ自分の中で消化できていませんが、自分なりに考えたいと思います。
  • 安全に傷つけることが出来る家族の力を知りたい。
  • 安全に傷つけることの促し方。とっても難しいなと思いました。今後少しずつ気を付けていけたらいいなと思いました。

  • 「守る愛と放す愛」、そして子どもを「安全に傷つける」ということが今日のお話のカギ概念です。頭では理解しても、具体的にどのように家族が振る舞ったらよいのかわからない、、、という質問をよく頂きます。
    それを見出すのが個別のカウンセリングとなります。それぞれの家庭で、ご事情はみな違うので、家族に合った「安全な傷つけ方」「放す愛」の実践をお薦めしています。

  • 傷つけないようにすることは自然にやってしまうことだが、先生の話を実践することが難しく感じた。

  • そうですね。「傷つける」というのは普通やってはいけないことです。
    つまり「安全に傷つける」というのは、世間一般に言われている常識に反するわけです。
    「安全に、、、」というのはどういうことなのかが難しいので、このあたりは、もう少し私からも丁寧にご説明しないといけませんね。

  • ひきこもり後に統合失調症を発症しました。病気を考えると本日の講演をそのまま手引きにしてよいのか困ります。

  • 病気の場合は多少の配慮が必要ですが、基本的には今日お話ししたことで構いません。それは、統合失調症といった病気の種類よりも、今、病気の症状や影響がどれほど出ているかによって異なってきます。「〇〇病だから〇〇してはいけない、、、」といった定型的な対応はむしろ危険です。

  • 当事者を支える親支援の様子を聞きたかった。

  • 講演でもお話ししましたが、こちらで定期的に開催している「ひきこもり脱出講座」がまさにその親支援となります。支援者の方もどうぞご参加ください。