2014年4月4日金曜日

家族療法連続講座のお知らせ

今年度より、田村研究室では心理援助者を対象に家族療法の講座を開催いたします。

目的
家族療法の理論と技法を基礎から学び、日々の臨床で、家族をうまく扱えるようにする。

対象者
心の支援に関わる専門家(医師、看護師、心理士、ソーシャルワーカーなど)
心理系の大学院学生など。

講座内容
講座は3つのモジュールから構成されます。。

モジュール1(基礎編)
座学とディスカッションを中心に、家族療法の考え方の基本を学びます。家族療法特有のものの見方、他のカウンセリング理論との違い、家族のアセスメント、複数のクライエントとの関わり方などの基礎を学びます。二回の日曜日に開催いたします。

モジュール2(実習編)
2日間集中して家族療法の基本となる実習を行います。ジェノグラム(家系図)実習、家族面接のロールプレイ、セラピスト自身の家族を振り返る実習などを通して家族関係を共感的に理解し、臨床現場で家族に関わる経験を深めます。

モジュール3(臨床編)
家族療法の臨床応用について学びます。具体的な事例検討やロールプレイを取り入れて、家族のアセスメント、家族に対する面接技法などを実習を通して学びます。月1回、土曜日の晩に開催します。

3つのモジュールを通した受講をお薦めしますが、各モジュール単独で受講することもできます。

使用教材
日本家族研究・家族療法学会編「家族療法テキストブック」(金剛出版)

日程
モジュール1. (12時間)
2014年6月15日(日)
1000-1300 セッション1
1400-1700 セッション2

2014年7月13日(日)
1000-1300 セッション3
1400-1700 セッション4

モジュール2. (12時間)
2014年8月2日(土)~3日(日)(2泊3日)
2日(土)900-1200 セッション1
     1300-1700 セッション2
3日(日)900-1200 セッション3
           1300-1600 セッション4

モジュール3. (12時間)
1)9月6日(土)1800-2000
2)10月4日(土)1800-2000
3)11月8日(土)1800-2000
4)12月13日(土)1800-2000
2015年
5)1月17日(土)1800-2000
6)2月14日(土)1800-2000

開催場所
田村毅研究室(西麻布)

講師
田村 毅

受講料
各モジュール:3万円(税別)(各モジュールの初日に徴収いたします)
3モジュール一括で申し込む場合:8万円(税別)

申込方法
5月より申し込みを開始いたします。
現在、予約受付中。(メールでご連絡ください)

今後、具体的な内容が決まり次第、順次こちらに掲載します。

2014年4月2日水曜日

めまいが止まらない70代の女性

Aさんは70代の女性。40代の息子さんと一緒に住んでいます。

外に出るとふらつくので、倒れるのではないかと怖くて、ひとりでは外に出られません。本当はひとりで出歩いて習い事をしたり、自由に買い物などをしたいのだけど、誰かと一緒に出ないと、倒れたときに誰もいないので怖くなります。やがて自分の死を迎えることを考えると怖くなる、ということで相談にやってきました。自らは相談しようとは思いませんでしたが、習い事の先生から勧められて、思い切って相談に来てみました。

Aさんは、豪商の家庭に生まれ、裕福な家庭でのんびり育ってきました。欲しいものは何でも買い与えられ、家の中でわがままで育ってきたと思います。
恵まれた結婚をしました。10歳離れた夫は著名な学者で、一流の大学で教えていました。結婚当初はなにひとつ不自由することなく、3人の子どもを授かりました。しかし、その夫とは子どもたちが幼い頃に離婚しました。夫は努力家で、学者という立派な地位を持ち、社会的には成功しましたが、家のことは無関心で、休みの日にはほとんどゴルフに出かけて、子どもたちの世話をすることはありませんでした。しかしそれが離婚の原因ではありません。一番大きかったのは夫の母親とうまくいかなかったことです。同居していた義母とはうまくいかず、夫に助けを求めたのですが、夫はいつも自分の母親の味方をして、妻であるAさんを支えてくれませんでした。別れた夫はその後再婚し、今は認知症が進行して養護施設で生活していると聞きます。

それでも、子どもたちは立派に成長しました。3人とも有名大学に進学し、上のふたりはそれぞれの家庭を築いています。孫たちの顔も見せてくれました。気がかりなのは末の次男です。40代ですが独身のままでAさんと同居しています。仕事で多忙だし、家のことは何もできないので、母親であるAさんが身の回りの世話をすべてみています。とても優しい息子ですが、将来、独り身のままでどうなるのかが心配です。

15年ほど前にAさんの母親がガンでなくなりました。それがとてもショックで当時はずっと泣いていました。Aさんは離婚してから、母親がずっと面倒を見てくれていました。母親を亡くし、どう生きていったらよいかわからず、また自分自身の死についてもとても怖くなりました。そのころから体調が思わしくなくなり、いろいろな病気にかかり、内科や耳鼻科、眼科、脳外科など、たくさんの医者にかかりましたが、ふらつきは一向に良くなりません。精神科の先生とももう10年以上のつきあいです。先生からはうつ病や自律神経失調症ではなく、不安症候群と言われました。ホルモンを調べても、脳のCTをとっても異常はみつかりません。精神安定剤をずっと飲んでいるのですが、自分に薬が合っていないようで、飲めば気持ちは落ち着くのですが、ふらつきと目まいはぜんぜん治りません。でも先生は「必ず治るから、ゆっくり治してゆきましょう」といつも言います。

以上が、Aさんの様子です。
Aさんの心の健康をどう理解したらよいのでしょうか。

Aさんは、ずっと精神科にかかり、薬を飲んでいます。不安神経症という病名はついているので、精神的な病気ではあるのですが、病気というよりむしろ生き方の問題と考えたほうが良さそうです。
生き方の「問題」というのも語弊があるかもしれません。むしろ、生き方そのものです。

Aさんは恵まれた家庭に生まれ育ち、わがままに育ってきました。それが悪いということではありません。そのような環境の中で、立派な男性と結婚して、立派な子どもたちを育て、ひとりの女性として尊厳のある生き方をしてきました。

しかし、人生には様々な困難があります。今の世の中では離婚も社会的に認められるようになりましたが、Aさんが離婚した時代には、離婚=結婚の失敗と考えられていたでしょう。Aさんはそんな逆境にも耐え、自分を大切に愛してくれた母親の喪失にも耐えてきました。

その後、体調を崩し、めまいとふらつきがどうしても治りません。私は、むしろめまいとふらつきの症状は治らない方が良いと思います。もし、治ってすっかり元気になってしまったら、医者の支援を受けることもなく、子どもたちも母親のことをそれほど気にせず、ほって置かれてしまいます。そうすると、Aさんはますます孤独に陥ります。Aさんは、症状に悩みながらも、なんとか習い事をこなし、子どもが付き添ってくれれば買い物や外出を楽しむこともできます。Aさんの人生は健康問題を抱えながらも十分に幸せであると思います。しかし、自分が幸せと言ってしまうとまわりからの同情と支えを失ってしまうかもしれません。子どもたちや社会福祉に適度に甘える人生であっても、それは尊厳あるひとりの人の人生の選択として、十分に価値あるものと考えます。


Aさんの心の病気は治すべきものではなく、それを抱えつつ、家族や社会の人々とうまく関わり、価値ある人生を全うすることです。

2014年4月1日火曜日

ひきこもり脱出講座(5)

ひきこもり脱出講座(5)
~ひきこもりを家族の力で解決しよう~
講座内容
社会との接点を失いひきこもる人に家族は何をできるのか。一般論ではなく、個別の状況に応じた解決策を見出します。
  • なぜひきこもるのか?(ひきこもりの理解)
  • どうやったらひきこもりを脱出できるのか?(解決策)
  • 親の声のかけ方、かかわり方。母親の対応と父親の対応(家族関係)
対象者
  • ひきこもりの方を抱えるご家族の方(親、その方のきょうだいなど)。
  • 講座の初回は個別の面談となります(約30分)。
  • 今までは週日の昼間に開催していましたが、今回は2回の週末(土曜の午後と日曜の午前)に集中して開催します。ご両親、あるいはごきょうだいなど複数の方でご参加ください。
開催日時
全5回。
  1. 事前個別面談(各々ご都合の良い日時を設定します。)
  2. 2014年8月 9日(土) 15:00~18:00
  3. 2014年8月10日(日) 10:00~13:00
  4. 2014年8月30日(土) 15:00~18:00
  5. 2014年8月31日(日) 10:00~13:00
(すべてに参加されることを原則としますが、ご都合で欠席しても構いません)

参加費用・定員

定員 : 10名 
参加費 : 
おひとりでの参加 30,000円(税別)
おふたりでの参加 55,000円

申し込み
  • お電話、もしくはウェブからお申し込みください。
  • 申し込み締め切り:7月末日
  • ご夫婦(もしくはごきょうだい)複数での参加をを原則としますが、定員に余裕があれば、おひとりでの参加もお受けいたします。
  • ご夫婦・ごきょうだいなど複数で参加される場合は先着順でお受けいたします。おひとりでの申し込みは受付後、8月1日に参加できるかご回答いたします。