2014年1月23日木曜日

ひきこもり脱出講座最終回のフィードバック

ひきこもり脱出講座に参加されたみなさん(と読者のみなさん)へ

本日(1月8日)の講座、お疲れさまでした。
いつもは次の回に前回のフィードバックを行いますが、今回が最終回で次の回がないので、ブログ上でプライバシーに配慮してフィードバックします。本当はもっと早く上げたかったのですが、遅くなり済みません。
  • みなさんの貴重なお話がたくさん聞けて、今回で終了なのが残念です。主人が一度も参加できなかったことも残念で、ご夫婦でいらっしゃっている皆さんが羨ましく思います。
今回の講座はウィークデイの昼間でしたので、お仕事をお持ちの方はなかなか参加しにくかったと思います。それにも関わらず、今回ご夫婦おふたりで参加した方が多かったのはとても良かったと思います。今後の講座は、週末や夜間の開催も考えたいと思います。
  • ほかの家族の方の話を聞いて参考になることもあり、大変良かったです。今回でこの関係が終わってしまうことが少し残念です。
次回に続けてご参加ください。新しいメンバーを迎え、お話がさらに発展し、深まると思います。
  • 皆さんのお話がとても勉強になりました。もう少し回を重ねてもいいかなと思いました。やっと話が深まったところだと思います。ほかの家族の話を聞くと、自分だけで考えていたことがいかに狭かったかとよくわかりました。
  • 同じものを見るにも高さを変えたり方向を変えたることはとても大切だと考えさせられました。
普段とは異なる視点を持つことはとても重要です。
通常、家族はいつもの変わらぬメンバーで長い年月を過ごしていますので、ものの見方や考え方はひとつの方向に固定されてしまいます。親子関係や夫婦関係も、ひとつのパターンに固定してしまいますね。家族の力でひきこもりを解決するためには、今までとは異なる家族の関わり方・パターンをどう見出すかということが大切になります。
  • 参加者の質問や意見に対して、先生が明快に答えるのではなく、口ごもり、ためらいながら答えていたことが印象に残っています。それが「届く言葉」になっていくのだと思いました。
いえ、別にわざと口ごもっていたわけではありません(笑)。
でも、明快には答えられないんですよ。
「子どものことをどう理解したらよいのだろうか、どう対応したらよいのだろうか、、、」
といったみなさんからのご質問は、「これが正解」という答えがありません。各家庭の事情によって千差万別なので、どの場合にも通用するような「正解」がありません。みなさん、どうしたらよいのかわからなくなり、戸惑っていらっしゃいますよね。それにお答えする私もどうしたらよいのかわからなくなり戸惑います。私が今まで経験してきたご家族のお話や知識を総動員して、その都度考えています。だから口ごもってしまいます。それがかえって「届く言葉」として受け止めていただけることはうれしいです。
  • 知らず知らずに親の価値観を押し付けていたであろうと、息子がこうなってからずっと考えていました。
  • 親の価値観をこれから変えてゆかなくてはならないかもしれません。とても大変だと思います。まるべく価値観を押し付けないようにして、息子の価値観を認めていきたいと思います。
今日は「親の価値」という話がたくさん出ましたね。とても大切な部分です。ひきこもる人は自分の価値(自分はこうすれば良いのだという指針、自信、希望)を見失っています。

親が子どもにどう価値を伝えるかということがとても大切になります。うまく伝えると、子どもは自分の価値を取り戻すことができます。下手に伝えると(あるいは伝えることを止めてしまうと)子どもは価値を見失ったままです。
「価値」は自分一人の単体では生まれません。別の価値を参照して自分に取り込もうと試行錯誤する中で、自分自身の価値が生まれます。
子どもが成長し、自分自身の価値を創っていくために、家族やまわりの人々の価値との相互作用が必要です。
例えば、社会の中で自立して生きていくためには、「私はこういう道を進みたい。勉強という価値が重要だ。良い学校を目指したい。良い職業を目指したい、、、」という価値が大切です。
子どもは家族や社会からの承認を得て自信を獲得するために、まわりからの期待に応えようとします。それを達成することによって自信を獲得し、また逆に達成できずに自信を喪失したり繰り返しながら自分の身の丈に合った価値を作っていきます。ちょうどよいサイズの価値を創るためには成功体験(喜び)と友に失敗体験(痛み)が必要です。

子どもは成長していく中で、自分の価値を人(社会)との交わりの中で試しながら修正していきます。親も同様に親から子どもに伝えるべき価値を常に見直します。子どもに期待し、子どもの能力や性質を見極め、高すぎないか、低すぎないかを調整します。

ある程度は親の価値を子どもに押し付けることは必要です。親の価値を子どもに提示して、無理かなと思っても、すぐに撤回してはいけません。ある程度は押し付けたままにして、子どもが乗り越えるかどうか見極めます。もしかしたら想像以上にがんばって親を乗り越えるかもしれません。あるいは、ダメかもしれません。走り高跳びのようなものです。1回目、2回目に失敗しても3回目に成功するかもしれません。3回失敗したらハードルの高さを下げなくてはなりません。

以前、子どもにかけた期待が成就できず、うまくいかなかったために、もう期待することを諦め撤退してしまう親がいますが、それではダメです。親は子どもに期待し続けなければなりません。それが高すぎても低すぎてもいけません。自分にとって大切な他者(=親)が見守るからこそ、子どもはがんばることができます。

親自身は自分の価値に固執してはいけません。親が子どもに伝える価値を子どもの状況に合わせて柔軟に調整するためには、親自身が他の価値を知り、試行錯誤することが大切です。親も、自分の親から伝えられ内在化した価値を心の中で参照しているはずです。夫婦のあいだでその価値を参照し合うことができると、より柔軟な価値を生み出すことができます。ひとりよがりにならず、適切な価値を伝えるためには対話が必要です。子どもと対話し、夫婦やまわりの人との対話が新たな視点を生み出します。この講座やカウンセリングも、対話を生み出す機会を提供します。
  • 価値観を変えることの難しさ(特に父親)はどこも同じだと思いました。確かに、それぞれの家庭に引き継がれた価値観に縛られ、子どもが苦しいとひきこもってしまったのだと思います。100%でなくても、努力して変えられる範囲で変えたいと思います。
父親の関わり方、母親の関わり方についてもお話がたくさん出ましたね。
確かに、父親にとって難しいことです。
多くの家庭は父親が家族の価値を作り、母親がそれを支えていきます。最近ではその逆のパターンや、価値を作らない父親も増えてきましたが。多くの男性は、「しっかりしなさい。(しっかり価値を作りなさい)。ぐらついてはいけません!」と教えられてきました。女性はまわりに合わせるために柔軟で、男性は価値を作るために堅牢であるべきと教えられてきました(少なくとも私の感覚では)。ひきこもりは家族の価値を見直す良いチャンスです。母親は割と柔軟に対応しますが、父親はなかなか不器用です。理屈ではわかっていても、長年しみついた「ぐらつくな!」という癖が抜けきれません。
  • 夫が自分から子どもの就労支援の施設を見学に行こうと言い出しました。これまで夫は自分から動こうとせず、初めてで驚きました。これも田村先生の講座に通ったお蔭と感謝しています。
それはとても良かったです。ご主人は講座で多くは語りませんでしたが、講座を通してきっと多くのことを考えたのですね。その中で今までとは異なる新たな視点を獲得されたのでしょう。

親の力、特に父親の力は大きいものです。家族が無意識に設定した価値を変えることができたら、子どもはどんなに気持ちが楽になるでしょう。
子どもはその価値を成就し自分の価値として取り込み、引き継ぎたいと願います。それが思春期の自信獲得につながります。日本の中流家庭において、「良い学校」や「良い職業」に就くことはとても重要な価値です。しかし、それはあまりに重要で、あまりに自明のために、家族の中で案外語られないのではないでしょうか。家族カウンセリングの中でも学歴の話は私の方から振らないと、なかなか語られません。特に、立派な価値(学歴や職業)をお持ちの家庭では、それを成就することが大変です。うまくいけばよいのですが、うまくいかないとそのことが自信を獲得する大きな障害となります。
語ってしまった方がむしろ楽で、語られない暗黙の価値が子どもを苦しめます。それを成就しないうちは親から認められない、自分の価値を見いだせないと悩みますが、そのことを子ども側から言語化できません。
そのようなときは、あえて親が家族の価値を明らかにして子どもに伝えてあげましょう。
「お父さん自身は、こういう家庭に育ち、こういう価値を成就してきたんだよ。」
「あえて言わなかったけど、君が子どものころ、お父さんはこういう価値を伝えたかったのよ。そのことはあえて口に出さなかったけど。」
「今の君のことを、お父さんは真剣に考えている。講座にも参加した。そして就労支援施設にも行ってきたんだ。なかなか良かったよ。君にはこういう道が残されている。それは負け犬なんかではない。お父さんも承認できる、立派な道だよ!」
そのように伝えてあげて下さい。そうすれば、子どもは親によって認められた道を見出すことができます。
  • 価値観を変えるのは難しいけれど、別の価値観があることを知り、認めることはできると思う。私は夫の価値観と違うことを今では認めることができるようになりました。自分とは違う価値観を全部否定するのでもなく、受け入れるのでもない。自分なりに少し自信が持てるようになりました。でもそれは息子の状態に影響されますが。
それはとても良かったです。
ご両親の異なる二つの価値があることが良いことです。それらを相互に対比させ、認めるべき部分は認め、認められない部分は排除して、新しい、身の丈にあった価値を作ることができます。ご夫婦でお互いの異なる価値を全面否定もせず、全面肯定もせず、「あーだこーだ」とよく話し合ってみてください。
講座でもみなさん各家庭の「価値」を紹介し合いましたね。私からは取り立ててそういう流れを作ろうという意図はありませんでしたが、終わってから振り返ってみればそういうことだったんですよ。私の専門家としての「価値」もいくらかみなさんにお伝えしましたが、あまり前面には出しませんでした。私の立場をあまり出しすぎると、みなさんが相互に出し合えなくなってしまいますので、私はむしろみなさんの価値をお互いに引き出す役をとりました。

自分の価値、つまり自信とかやる気とか希望とかを生み出すためには他者性が重要です。
我々は家族や職場や友人や、社会の中で常にいろいろな他者と接していますので、その重要性に気づきません。
家にひきこもり、他者との交流がなくなると、この「他者性」を失ってしまいます。
そうすると、自分の価値を生み出せなくなります。禅僧のようにじっとひとりで瞑想していても、新たな価値は生まれません。本でもネットでも人でも構いません。自分が参照できる何らかの情報がなければ、人は成長しません。ひきこもっている人は、他者性の資源を家族に頼らざるを得ません。本やネットでも良いのですが、それらは単に情報のみで「人」が介在しません。自分によって大切な人によって語られる情報が、本当の意味で参照できる生きた情報です。

学校や会社や友人や、周りの人の中で生活していれば、親がそれほど関与する必要もなく、人は変化していきます。しかし、ひきこもりの場合には、本人が接することができる限られた人(=家族)が如何にうまい具合に「他者性」を伝えられるかということがとても重要になります。

私もみなさんがいるから、これを読んでくれるだろうと期待するから、こうやって文章を書くことができます。誰も読まなかったら書くはずありませんもの。(日記は後で読み返す自分という他者がいますね)。
このブログに書いているネタも本にしようと今がんばっています。
私が数年前重要な他者を失い、その痛みをさまざまな形で他者と関わることによって癒してきました。
他者によって傷つけられると、とても痛みます。それにもう懲りてしまったのがひきこもりです。
他者によって受け止められると、大きな喜びになります。それを原動力にして我々は日々を生きているんですよね。
良い意味で他者がいることって、とても大切だと思います。
ひきこもりなどの問題を抱えた親ができることも、この一言に尽きると思います。
  • 「また父親だけで集まりましょう」というのは、「カウンセリングの場ではなく集まる」というつもりでしたが、それだとただの飲み会になりそうで(それも良いのかも知れませんが)。先生がそういう場をお考えというのはとても興味があります。
  • 次の機会をいただければ、また参加したいです。
次の講座は4月以降に予定しています。
それとは別に、新たな講座として
「ひきこもり脱出講座:特に父親の関わりについて」
というような具合に、父親に焦点を当てた講座を作ろうかなと考えています。参加できるのは父親・母親どちらでも結構です。まあ、これも現時点で考えていることで、また変わるかもしれません。決まりましたらウェブサイトにお知らせします。
  • 質問)講座に出たことを息子に言おうと思いますが、主人が反対したらどうしたらいいでしょうか?もっと仕事のことや人と会う会などのことを息子と話し合いたいが(今までもしてきたが)主人は「あまり余計なことを言うな」と言うので難しいです。どうしたらいいでしょうか?男性だけの会など、またグループや個人カウンセリングいずれかをやりたいが、主人はここで終わりにしたいと言っていたので。
講座や仕事のことを息子さんと話し合うことも、今後もグループや個人のカウンセリングを続けることも、とても良いことだと思います。しかし、ご主人の意見がとてもネックになっているようですね。息子さんにどう関わるかということを考えるためにも、まずご主人ともう少し話を深めてはいかがでしょうか。今回あなたはご主人とともにとても熱心に参加されたと思います。ご両親ともそれぞれお子さんのことをとても心配して真剣に考えていらっしゃいますね。それはとても良いことです。

 なぜご主人は「息子に余計なことを言うな」とおっしゃるのでしょうか?なぜもうカウンセリングはもう終わりにしたいとおっしゃるのでしょうか?そこを奥さんからご主人によく尋ね、ご夫婦で話し合ってみてください。ご主人はご主人なりにいろいろ考えていらっしゃいます。多分、ご主人はまだ語り切れていない隠された不安や怒りなど、あまり触れたくないお気持ちを抱えていらっしゃるように思います。

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