2013年10月19日土曜日

承認を求めて、、、


あるお父さんの言葉から。

親は息子を受容できなかった。
というより、息子は親から受容されたという感覚を得られなかった。
それが息子の肥大したままのエゴに繋がっている。
親に追いつき追い越そうとして進学校に入ったまでは良かったが、高校ではまわりに自分よりできるやつがたくさんいて挫折した。自己万能感だけが光り、肥大したエゴを取り崩すことができなかった。

そう。息子さんが今、こうなってしまったのは親の責任だと親を責め続け、自分は何も悪くないと主張し、ひきこもってまわりとの交流を遮断することで、自分が傷つくことを極端に回避し、砂上の楼閣のような脆弱なエゴが崩れないように維持しているんですね。

父親も母親も子どもの頃いろいろあって、今までずっと自分の原家族を生きてきました。息子のおかげで、たくさんの心理学の本を読みカウンセリングを受けて、そのことに気づかされました。だから息子に感謝しています。

このお父さんは自分のこと、家族のことをとてもよく分かっています。
子どもの生育過程と、自分自身の成育過程が相似形であることを。

親から受容されなかったのです。
人は、自分が肯定されないと生きてゆくことはできません。
自分は絶対的に肯定されているのだ、自分が生きているのは良いことなんだ、自分は良い部分・悪い部分いろいろあるけど、根本的には生きているに値する良い存在なんだという基本的安定感です。
小さい頃もらいそこねた承認、自分を良いものであるという証明を得るためにとてもとても努力してきました。その結果、立派な鎧を獲得し、社会的に成功しました。
しかし、残念ながら根本の部分はとても脆弱のままです。
傷つけられることに対する耐性がとても低く、自分が崩れ去ることに怯え、ちょっとでも傷つけられると「怒り」という武器で反撃します。
残念ながらそれが一番親しい家族に向けられてきました。

子どもはまだまだ未熟ですから、良い部分もダメな部分もたくさんあります。ダメな部分があっても構わないんだよ、基本的には良い子だから、、、と子どものダメな部分をそのまま受け取ることができません。なにしろ、自分自身が承認された経験が見当たらないので、どうやって受け取ったらよいのかイメージがわきません。
子どものダメな部分をどうにかしないとダメになると危機感を抱きます。
どうにか親の力でカバーしようとやっきになって先回りして手を打とうとするか。
あるいは、逆に子どものダメな部分は親に対する侮辱なんだと受け取り、反撃してしまいます。
結局、子どもは「ダメな部分があっても良いんだよ」という安心感を得ることができません。

基本的安心感を持たない人は、他者を傷つけることができません。ちょっとでも傷つけられたらどれほどショックで立ち直れなくなることをよく知っているからです。しかし、自分を守るためにはどうしても相手を傷つけてしまい、後で後悔します。

夫婦関係も難しいです。
夫婦はお互いがフィットして仲良い時と、お互いがフィットしなくてケンカする時の両方が必ずあります。基本的安心感がしっかり根付いていれば、フィットしない時もなんとか耐えることができます。基本的安心感が足りないと、小さなマイナスのメッセージにも耐えられません。とても傷つき相手から離れるか、相手を攻撃してしまいます。もともとは仲良い関係であっても、negative communicationの悪循環の結果、仲が悪い面が全面に出てきてしまいます。
どんな夫婦でも、良い面と悪い面の両方を持っています。
それでもイイかな、、、と思えば、良い夫婦のストーリーができます。
それではダメだ、、、と思えば、ダメな夫婦のストーリーができます。

多少は傷つけられても大丈夫という芯がしっかり存在していれば、完璧でないといけないという自己万能感を取り崩し、70%くらいの自分でもまあ良いかなと自分自身にOKサインを出すことができます。そうすれば多種の人々と交わり多少自分の思いどおりにいかなくても、いじめっぽいイヤなメッセージを受け取ってもなんとか持ちこたえ、他者と折り合うことができ、だんだんと社会性を獲得していくことができます。矛盾に満ちた社会の中にどうにか自分の立ち位置を見出すことができます。

このお父さんの偉いところは、しっかり自分自身に向き合っているところです。
きっかけは他者(子ども)のことで相談にやってきました。
親として何ができるのかということを相談するために。
親に出来ることはたくさんあります。たくさん見出すことが出来ます。
でも、実際にはそう簡単ではありません。
子どもにうまく関わるためには、自分自身に向き合わねばなりません。
父親として、夫として、息子としての自分に。
他者(子どもとかパートナーとか)に問題があります。どうにかしてください、、、という視点はまだ楽なのです。
自分自身に問題があります。自分を掘り下げないといけません、、、という視点はとても難しいものです。
このお父さんは、しっかりそこをおさえています。

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