2012年10月17日水曜日

子どもを救う親の力

ご両親で相談にいらして、本当に良かったと思います。
現役時代は忙しく、家族と関わる時間が限られていたお父さまも、今は退職され家族と向き合えるようになったのこと。
今、お子さんは、ご両親の力を必要としています。

人はだれでも自己治癒力を持っています。身体の傷も、免疫によって自然に治癒しますね。心の傷も同じです。人は素晴らしい力を持っています。
しかし、それは人との関係があるからこそ発揮される治癒力です。
いじめや友人関係のトラブル、職場の人間関係や上司・同僚との行き違いなど、人間関係の傷は、人間関係によって修復されます。人と出会い、失敗体験と成功体験を繰り返す中で、また人と関わろうとする元気が出てきます。

社会からひきこもり家族以外の人と接触しなくなると、人間関係の機会を失ってしまいます。そのため、いつまでたっても人間関係で生じた心の傷が修復できず、長い間ひきこもってしまいます。

家にひきこもり、外部の人との関係が遮断された状態で、唯一得られるのは家族との接点です。
家族とのうまい関わりの中で、お子さんは心の傷を修復し、外に出る元気を取り戻すことができます。

では、家族はどう関わったら良いのでしょうか?
二種類の関わりが必要です。
  1. お子さんの心情を理解し、受け止めること。逆境の中をよく耐え、生き抜いているお子さんを受け入れ、肯定します。
  2. 大丈夫。キミならできるはずだ。もう一度挑戦してごらん、傷ついても大丈夫。キミならの乗り越えられるはずだ。親がそばで見ていてあげるから。」と傷つく不安と闘いながら前に進む元気を与えます。

今のご両親は(1)の関わりはなさっているのですが、(2)を十分に伝えていません。
お母さまは(1)のように理解し受け入れていることは十分なさっていますが、お子さんのことをとても心配されているので(2)のように「大丈夫。挑戦してごらん!」とは言えませんね。

お父さまは(2)の「挑戦してごらん!」とはたくさんおっしゃっています。ただ、「今のままじゃダメだ。どうにかしなさい!」とお子さんの現状を否定していますが、前に進む元気は残念ながら十分に与えていらっしゃいません。

お父さまのお気持ちや立場もわかります。
頑固で威圧的なお父様自身の父親と折り合いがつかなかったと伺いました。
我々は子どもと接するとき、自分自身が親から育てられてきたイメージ・記憶を心の中に抱き、それを子どもに伝えます。
ご自身の父親と折り合う体験がないお父さまにとって、息子さんと折り合うイメージが持てないのも当然のことです。なにもお父さま自身の落ち度ではありません。戦後の時代背景の中、父親の背中しか見ることができず育ってきた多くの男性にとって、多かれ少なかれ共通していることだと思います。

それを取り戻すのが親へのカウンセリングです。
ふだんの生活の中で、どのようにお子さんに接し、どう向き合えば良いのかを考えてゆきます。
なぜ、だらしない生活をしている子どもに対して、そこまで下りてゆかねばならないのだ!
というお父さまのお気持ちもよくわかります。
そうおっしゃりつつも、こうやってご両親で相談にいらっしゃいましたね。
それはとても良いことです。

どうぞ、お子さんの将来のために、今ご両親が何ができるかよくご相談なさってください。
外との関係が絶たれ、ご本人もカウンセリングにいらっしゃらない今、ご本人が問題を解決するために利用できる唯一の資源はご家族です。

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