2012年7月28日土曜日

いじめ自殺

大津市の中学生の自殺が問題になっています。
子どもの自殺=いじめが原因=学校の問題=教育体制の問題
精神科医としては問題がだんだんすり替えられていくようでとても残念です。
何が問題であるかと追求してもしかたありません。
「みんな問題がなくてマトモにちゃんとしている」という前提自体がおかしいんです。
・子どもの不幸な事件➡学校の問題
・電車の大惨事➡鉄道会社の問題
・震災と原発事故➡電力会社の問題
そりゃあ問題ですよ。今まで見えていなかった問題がたくさん露呈するから問題満載のように見えるけど、だれだってみんな問題だらけなんです。
問題の矛先が一点に集中し叩けばいくらでもホコリは出てきます。その結果、他のところの問題は自然と見過ごされてしまうことが怖いです。
今回の大津市の自殺問題について私はマスコミ報道を詳しくフォローしていないし、たとえフォローしたところで真相はわからないのですが、今までに子どもの自殺を何例か身近に経験してきました。いずれも「いじめ」が焦点になりますが、問題の構造はそんなに単純ではありません。その子自身にも問題はあるし、家庭にも問題があります。でも、子どもは亡くなってしまい調べられません。家族は悲嘆の最中で、とても家族に問題があったかもなんてことは言えません。ふつうでも家族の事情はプライバシーのヴェールに隠されて内情は見えないのに、「被害家族」に対しては同情と擁護こそすれ、その中身についてとやかくいうことは禁忌となってしまします。結局はいじめがあったかもしれない、いやあったはずだ、、、と真相が曖昧のままどんどん話が進んでいってしまいます。
私が過去に関わった自殺ケースでは、家族の中にいじめの構図がありました。いわゆる虐待です。でもそのことは深く掘り下げられず、学校のいじめを問題にして、保護者も学校も疲弊していきました。
「みんな問題があって弱さを抱えているのがふつう」というように前提を転換することが大切だと思います。そうすれば問題があることを恥じることなく、誰もが弱い部分を認めて援助を求めやすくなるでしょう。本当の強さは「私は強いです、問題なんかありません」と主張することではなく、自分の弱い部分を認めて人に伝えられることと私は考えています。

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