2012年7月11日水曜日

光と影の視点


今まではどこに相談に行っても、誰に相談しても、不安な気持ちが募るばかりで出口のない道をさまよっていた感じでした。

医療は基本的に問題志向(マイナス志向)です。
早期発見、早期治療。見落としてしまいがちな病気・障害をなるべく早く見つけ出し、それを「治療」するのが使命です。
能天気に「大丈夫でしょう」(プラス志向)と言って患者さんを安心させておいて、後で病気が見つかったらやぶ医者です。

多くの精神科医とカウンセラーに欠けているのは関係性の視点光と影の視点です。

光と影の視点とは?
影を見ると意気消沈し、不安が募り、守りの態勢に入ります。
光を見ると元気になり、前向きに生きていく自信と勇気が出ます。
思春期はウチの世界からソトの世界へゆっくり移行する時期ということはすでにブログに書きました(2012.6.28)。だれにとってもウチの世界からソトの世界に巣立つことは大変な作業です。自分はできるかもしれないという自信と、飛び込んでいく勇気が必要です。

多くの医者やカウンセラーは影に焦点を合わせます。
・なにかの病気や障害かも...
・性格に問題があるかも...
・学校に問題があるかも...
・家族に問題があるかも。親の関わり方に問題があるかも...
これらの影に焦点を当てると、親の影の部分が起動されます。不安が募り、守りの態勢に入ります。危険を回避するために子どもをウチの世界に囲い込みます。

関係性の視点とは?
親密で、日常を共にする関係性では、口に出さなくとも気持ちがお互いに伝わります。
不安な気持ち(あるいは安心な気持ちも)は家族内で伝播します。
子どもが不安になると親も不安になり、親が不安になると子も不安になる。
妻が不安になると夫も不安になり、夫が不安になると妻も不安になります。
不安の中では子どもはソトの世界に飛び出せません。
不安な気持ちが増殖すると、家族全体が不安感に巻き込まれます。いろいろな症状や問題行動が出現して、人との関係が崩れ、ますます問題と心配が増えてゆきます。

影に焦点を当てる精神科医(日本によくあるタイプ)は病気や障害ではないだろうかと一生懸命診断します。
時間がないので、とりあえず症状にあった薬(入眠剤とか安定剤)を処方します。
ホントに影かどうかよくわからなくても、見落としを避けるために「〇〇病の疑い」があって、将来病気に発展するかもしれないからとりあえずお薬を処方します。
影ではなく白だったら、「あなたは病気じゃないから来る必要はない」と言います。

影に焦点を当てるカウンセラーは、心の影を一生懸命探し出します。
子ども自身に対しても、親に対しても。
昔、辛かった体験が隠されていないか。自分の親との関係がまだ整理されていないか。今の夫婦関係や家族関係にストレスを抱えていないか。
確かにそういう心の影が隠されていると、意識せずとも不安な気持ちが増え、家族に関わるときも守りの態勢に入ります。
それに、そういう話は痛い部分なのであまり言いたくないし、今直面している子どもの問題と別の話題なので、あまり話したくありません。
「いえいえ、そういうことが大切なのですよ。」
カウンセラーはそうやって丁寧に影の部分を探し出します。
そりゃあ、だれでもありますよね。長い間生きていればさまざまな影の体験が掘り出されてきます。
それを整理して、心が軽くなり、その元気が家族に波及して問題が自然と解決していく場合もあります。
しかし、精神病や障害も見つからず、心の影を整理してもなかなか元気にならない場合が多くあります。思春期の臨床ではこちらの方が多いです。
すると良くあるパターンは、医者から処方された薬を飲み続けているだけ、カウンセラーからずっと話を聞いてもらっているだけということになってしまいます。

影ばかりでなく、光に焦点を合わせることが大切です。
どうやって思春期を乗り越えていくための光を蓄えることができるか。
どうやって家族全体が元気に関わり合うことができる光を蓄えることができるか。
このように光に焦点を合わせる姿勢がレジリエンス(Resilience、困難さを跳ね返す力)といって最近注目されています。

0 件のコメント:

コメントを投稿