2012年6月10日日曜日

不安領域と安心領域

「一緒に参加した方々のお話しを聴くことで、自分が気づかなかったことが見えてきました。
ひとつひとつの話が自分の在り方の振り返りの材料になります。」

思春期子育て塾に参加した方の感想です。
これがグループの力なんです。グループに参加することは、初めはかなり戸惑います。恥ずかしいし、どこまで自分のことを話してよいものやらよくわかりません。でも、お互いに少し親しくなり、気持ちが見えてくると、お互いから学び合えるんですね。

ファシリテートしている私も同様です。参加しているみなさんの言葉から、さまざまなことを振り返ることができます。今回の振り返りは次のようなことです。

親は子どもへどう接したらよいのでしょうか。カウンセリング心理学では、
  • ちゃんと子どもに向き合いましょう。
  • 子どもを褒めましょう。
  • 子どもを否定せず、そのまま認めてあげましょう。
というように良く言われますし、私も言ったりします。
確かにそうなんです。
間違ってはいないのだけど、このような言説が親にとってかえってプレッシャーになっているようにも思います。
子どもへの向き合い方は、そういうハウツーものでもないように思います。もうひとつ深いレベルの話なんです。家族に向き合う時、自分はどんな気持ちでいるかということが大切です。

日常生活の中で、
「そんな〇〇ではダメよ。もっと△△しなさい!」
と子どもに言う場面はたくさんあります。たとえば、、、
「学校休んだら進級できなくなるわよ。学校に行きなさい」
「ゲームばかりやっていてはダメよ。もっと勉強しなさい」
「甘いものばかり食べていてはダメ。間食をやめなさい」
「そんな高いもの買ってはダメ。もっと安いものにしなさい」

カウンセリング的「子どもを否定せず、すべて受け入れましょう」言説では、このような言い方は禁じ手なのでしょう。しかし、私はそうは思いません。言葉の内容はどうでも良いのですよ。それを表現するとき、どのような気持ちが根底にあるかということが大切なのです。

人の心は不安領域安心領域のふたつから構成されます。その割合は、生活状況の中で常に変化しています。問題が生じてたいへんな時、苦しい時は不安領域が多くなり、
嬉しいこと、幸せなことがあれば安心領域が多くなります。
人に向ける言葉は、そのどちかの領域から発せられます。

安心領域とは肯定的な見通しです。将来のことはわからないけど、どちらかというとプラスの方向に行くのではないかという楽観的な見通し。まあ、大丈夫だよ、きっと。根拠のないお気楽主義です。そりゃあそうですよね、将来のことはだれもわかりませんから。

不安領域は否定的な見通しです。将来のことはわからないけど、どちらかというとマイナスの方向に行くのではないかという悲観的な見通しです。いやあ、きっとヤバいよこれは。根拠のない悲観主義です。そりゃあそうですよね、将来のことはわからないけど楽観視していたら痛い目に合うんですよ。低めに見積もっておいた方が、もしもの時にがっかりしないで済みますから。

この気持ちは家族の間で伝わります。
安心領域からのメッセージは、相手も安心にさせます。
不安領域から発せられたメッセージは、相手も不安にさせます。

たとえば、
「学校休んだら進級できなくなるよ。学校に行きなさい!」
一見、キツイ言葉ですが、安心領域から発せられる場合も、不安領域から発せられる場合もあります。ホントの気持ちが
安心領域から発せられる場合:
「いじめられたと言ったってあなたはそれを跳ね返すだけの力を持っているわよ、多分。イヤでも行っていれば慣れるわよ。そんなウジウジ言ってないで学校に行きなさい!」

不安領域から発せられる場合:
「このまま休んだら進級できなくなって、ひきこもりになって、あなたの人生はダメになるわよ。今行っておかないと、悲惨な結果になるわよ。だから学校に行きなさい!」

上と逆のメッセージを考えてみましょう。
「いいよ、今は無理して学校に行かなくても構わないよ!」
一見、子どもを肯定するメッセージですが、これも安心領域、不安領域の両方が考えらえます。
安心領域から発せられる場合:
「しばらく行かなくても、長い人生、とりもどせるよ。ストレートに進まなくても人生はちゃんとやってゆける。君はその力を持っているはずだね。自分のペースで進んでごらん。」

不安領域から発せられる場合:
「あなたにはもういくら言っても無駄ね。カウンセラーの先生に、子どもをすべて受け入れなさいと言われたわ。私のやり方は間違っていた。ゴメンなさい。親のせいね。もうあなたの自由にして。お母さん、あなたに関わる自信ないわ。」

安心な心(子どもも大人も)は、逆境を乗り越え、前に進めます。
不安な心(子どもも大人も)は、変化を恐れ、停滞させます。

親は子どもに何を言っても構いません。
大切なことは、子どもや家族にふりかかるさまざまな困難さの中で、どれほど安心感・安全感をキープできるかということです。

0 件のコメント:

コメントを投稿