2012年5月11日金曜日

あるがままを受け入れてはダメ

「あるがままの子供を受け入れましょう」「見捨てずに愛していきましょう」
カウンセラーは良くこのように言います。
はっきり言って、これは間違っています。

、、、いえ、間違ってはいません。子どもが思春期の前ならば。
しかし、思春期以降にひきこもっている子どもにこれをやってしまうと、かえって長期化してしまいます。

1)「あるがままを受け入れる」「見捨てずに愛する」とはカウンセリングの基本中の基本です。
簡単にはぶれずに困難に立ち向かい、自信を持って他者と交流できる、しっかりとした自分を創るためには、自分自身のことを肯定できることが不可欠です。それがあれば周りから多少は否定されても傷つかず、ぐらつかずに「自分はこれで良いのだ」という肯定感を維持して前に進むことができます。これがないと、まわりのちょっとした出来事によって心配になったり傷ついたり、あるいは人から侵害された(いじめられた)気持ちになり、怒ったり、ひきこもったり、うまくやっていく自信を失ってしまいます。
ぶれない自分、自分のことを肯定できる、自信を持てるようになるためにはどうしたらよいでしょうか。とても大切なテーマです。一言でいえば、良い意味での他者の関わりが必要なんです。自分という存在は、自分ひとりでは成り立たちません。「キミはそれで良いんだよ」と肯定してくれる他者が必要です。それは身近にいて絶対的に信頼できる人、つまり親です。子どもを全面的に受け入れる姿勢が大切です。
条件付きの愛情ではいけません。「あなたが良い子だったら、私の期待に沿う子だったら愛してあげるよ」、「良い子でなければもう愛してあげない、見捨てるよ」というメッセージではだめなんです。本当の承認感を得られず、いつまでも親の承認を求め続け、それが得られたと感じるまでは完全に自分を肯定することができません。実際、このようなメッセージを意図せず送っている親は多くいます。そのような時、カウンセラーは条件付きではない無条件の承認を子どもに与えるように支持します。

2)しかし、思春期は違います。
思春期には、ふたつの自分が共存しています。
幼い自分:まだひとりではダメで何もできない、他の人に依存してやってもらわないとダメで、自分ではなにもできずに失敗してしまう自分。
しっかりした自分:困難に立ち向かい切り抜けていくことができる自分。
のふたつが入り混じっています。
どちらがホントでどちらがウソというわけではありまえん。両方ともホントの自分であるところがわかりにくいところです。ただし、ひきこもりをしているのは前者の自分です。ひきこもりはじめると、それまで健在だったしっかりした自分が後退して幼い自分がどんどん拡大してゆきます(退行)。幼い自分から発するニーズ、たとえば親の責任に転嫁したり、依存してひきこもりたい欲求などをあるがままに受け入れてしまったら、幼い自分がどんどん肥大していって、しっかりした自分が育たなくなります。
大切なことは、幼い自分ばかりでなく、しっかりした自分をしっかり認めてあげることです。
「あれ、きみ、結構大人になっているんだね。」
それを受け取ると、しっかりした自分が成長します。親の言葉は子どもに大きく影響します。
「そうなんだ、オレってけっこうできるんだ!」
と自信を増やしていくことができます。
親は幼い自分ばかりを受け入れてはダメです。
少しずつ芽生えてきたしっかりした自分をしっかりと受け入れてあげることが大切です。

しかし、これは思いのほか難しいものです。
ひきこもったり、退行している思春期の子は、しっかりした自分を引っ込めて隠しています。その芽を見出すことは至難の業です。親のみでは難しいので、カウンセラーが一緒に探します。
また、親自身が持っているしっかりした自分幼い自分の塩梅も関係します。
ふたつの自分(幼さ vs. しっかりさ)という構図は思春期に目立ちますが、実際には人生を通じてみられます。子どもにもしっかりした自分がいますし、年齢的に大人の人にも幼い自分が居ます。
親の幼い自分は、子どもの幼い自分を見つけられますが、子どものしっかりした自分を見過ごしてしまいます。
親のしっかりした自分は、子どもの幼い自分はあまり気にせずに、しっかりした自分を見つけられます。
親が子どものしっかりした自分をなかなか見つけ出せない時、カウンセラーがお手伝いします。しかし、カウンセラーが直接見つけてしまっては何の意味もありません。親自身の目で確認することが大切です。だから、カウンセラーが子どものしっかりした自分を見出しても、そのまま親に教えません。いじわるしているわけじゃありませんよ。回り道のようですが、まず親のしっかりした自分を元気によみがえらせるところから始めます。つまり、カウンセラーはひきこもっている子どもに働きかける前に、親に直接働きかけ、親がうまく子どもに働きかけられるように支援します。
これが、ひきこもりの家族療法の考え方の基本です。

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